みなべ千里の浜 夕陽と蜃気楼

この日の朝は本州最南端の町・串本にいた。天気予報では晴れのはず・・・だった。朝早くのうちは確かに晴れていたが、10時を過ぎることには一面の曇天。大島や潮岬を巡るも、どうもパッとしない。ネットで天気を見ていると、北のほうがまだマシのようだ。それで、午後の早めの時間に串本をあきらめ、北へとクルマを走らせる。

すさみ、白浜、田辺と走るが、空は曇天・・・だったのだが、みなべに入ったあたりで陽が射してきた。雲が綺麗に切れているのが見える。あの雲の切れ間はちょうど、本州有数のアカウミガメ産卵地として知られる千里の浜だ。曇天に覆われていた一日の終わり、ここで陽の沈むのを眺めようと決め、クルマを止めて海岸に降りた。
一年前の夏に来た時はちょうど干潮だったのか岩場を歩けていろいろな魚の姿を見られたのを思い出し、そちらの方をめざすも今は満潮のようで磯の姿はなく、砂浜で寄せたは返す波を眺めていると・・・水平線に、どうも違和感のある影が見える。しかも、水面から浮いている!これはきっと蜃気楼だ。持っていた一眼レフカメラのレンズを望遠に変えて撮ってみた。蜃気楼であろうことはわかるのだが、最初、正体が何なのかわからなかった。建物っぽいけれど、写真で見たことのある魚津の蜃気楼とはちょっと違う。一体何だろうと思い何枚か撮っているうちに、ようやく船の姿に見えてきた。

幻のような船が元の姿になった頃、陽は随分と傾いて、美しい夕陽を見せてくれた。曇天にがっかりした一日だったけれど、最後に思いもよらぬ奇跡の風景に出会えた。