さまざまな形の島や半島が複雑な海岸線をつくるリアス海岸の地形が美しい志摩半島。その東側に、細長く入り組んだ的矢(まとや)湾がある。カキの養殖でよく知られており、湾に面して志摩スペイン村がある。
そんな的矢湾沿いの宿に泊まった時のこと。
ちょうど夜が明ける頃に目が覚めた。宿の窓から的矢湾を眺めると、瑠璃色の空に水平線沿いが暁色になり始めていた。ほんのわずかな間に、東雲色から曙色へとグラデーションに移り変わっていく。まだ少し眠かったけれど、もう目が離せない。
わずかな間に、一瞬だけ見せては変わっていくさまざまな色。
明るさが増してくると、波のおだやかな湾の水面も空の色を対称に映して色を変えていく。
そうしてすっかり明けきった空は、真っ青な夏空になっていた。