おおかみこどもの雨と雪 花の家

細田守監督によるアニメーション映画「おおかみこどもの雨と雪」。その舞台となった家は、モデルが実在している。それがここ、細田監督の出身地でもある富山県中新川郡上市(かみいち)町の古民家・おおかみこどもの花の家

じつは、もともと知っていて訪れたのではなく、ここの存在は現地・上市町に入ってから知った。この日は、立山連峰の中でも特に荒々しい姿を見せる剱岳をゆっくりと眺めたくて上市を目指した。ところが、青空が広がる好天ながら立山連峰には雲がかかっていて、剱岳が見えない。それで、さてどうしたものかとネットや地元の案内板などで情報収集していたところ、この家の存在を知った。地図で見たところ市街地からはだいぶん離れた場所だったが、ほかに目的もないので行ってみることにした。

Googleマップのルート案内が示すキロ数以上の距離を感じつつ、細い山道を通り抜けようやく小さな看板があらわれたのでクルマを停めた。あきらかに空気感が違う。匂いや温度、五感を通して伝わってくるもののすべてが何か先ほどまでいた上市の市街地とは違う感じがした。
そこからほんの少し歩くと・・・あった。確かに、映画で見たままの古民家がそこにあった。外観を眺めるだけではなく、家の中にも入れるようになっている。中に入ってみると、作品にまつわるものがいろいろと展示されている。
ちょうど他に誰もいなかったこともあり、何かちょっと現実とは違う異世界に来たような感じすら漂う中、映画のシーンに思いを馳せた。

>> おおかみこどもの花の家 (富山県上市町)

あさひ舟川 春の四重奏

残雪の雪山を背景に、舟川べりの桜並木とチューリップ、そして菜の花が四重奏を織りなすことで知られる富山県朝日町の「春の四重奏」。
観光PRのポスターなどで知り、一度この目で見てみたいと思いつつも、なにぶんごく限られた時期だけの風景のためなかなか機会がなかったのだが、2023年、3月末に休みが取れた。しかも、この四重奏が見られる朝日町は富山県の中でも新潟県の県境に近い最東部なので、平年並みならば3月末に桜はまだ咲いていないのだが、2023年は全国各地で記録的早さで桜が開花している。
休みと桜の早期開花。せっかく条件が重なったので、いよいよ赴いてみることにした。

が・・・やはり自然が相手なので、その四者がピッタリ揃う風景を見るというのはなかなか難しいもの。確かに桜は咲いており、背景にそびえる朝日岳や白馬岳の雪山は雄大だったものの、チューリップと菜の花がまだ早かった。わずかにチューリップが咲いている場所で三重奏までは奏でてくれていたのだが、カルテットを目にすることはできなかった。

それでも、見事だ。
田植え時期でもないのに、リフレクションが楽しめるようにと農家さんが張ってくださっていた水に雪山と桜が映える。そして夕暮れ時、白い雪をスクリーンに夕陽が山を夕焼け色に染め始めた。

佐久島 イーストハウスと島東部

 

>> 佐久島 おひるねハウスと島西部 から続く

島西部のおひるねハウスと対を成すような存在なのが、東部にあるイーストハウス。おひるねハウスが黒だったのに対し、イーストハウスは眩しいほどの真っ白だ。青い空にとても映える。
イーストハウスは、その南に位置する大島へと続く桟橋の途中にあるのだが、この周辺の海はとても透明度が高い。その透明な海の中を大島へと続く電柱が並ぶ風景は、ちょっと『千と千尋の神隠し』の世界を思い出させる。

おひるねハウスとイーストハウス以外にも様々なアート作品あふれる佐久島だが、そのふたつのハウスの中間あたり、大浦海岸のカモメの駐車場もまた海に映える作品だ。この写真ではみんな向かって右を向いているが、風でクルクルと回るので、風向きによってカモメの向きも変わる。

西港、東港、それぞれの港にあるレンタサイクルを使えば一日でぐるっと見て回れるくらいの広さ。信号機もコンビニもない島で、ゆっくりと流れる島時間を楽しんだ。

佐久島 おひるねハウスと島西部

知多半島と渥美半島の間、三河湾に浮かぶ日間賀島、篠島、佐久島。
そのひとつ佐久島は「アートの島」として知られ、島内に様々なアート作品が並ぶ。そんな佐久島アートを代表する作品のひとつが、島の西部にあるおひるねハウスだ。
佐久島は愛知県西尾市一色港と船で結ばれており、西港と東港のふたつの港があるが、おひるねハウスは西港から歩いて10分ほど。彼岸花咲く道を通り抜け、辿り着いた。黒い箱が9つの“部屋”に仕切られており、そのひとつに入ってただ静かに海を眺めて潮騒に耳を傾けるだけの時間。心が整ってくるのを感じる。
アートだけでなく古い町並みも魅力で、島の西側には黒壁の家が並ぶ。おひるねハウスの黒はこの黒壁がモチーフだ。
島西部を歩いていると、初めて来たのにどこかで見たことのあるような気がする古民家を見つけた。動物写真家の岩合光昭さんが監督された映画『ねことじいちゃん』のロケ地だった。

関連記事
>> 佐久島 イーストハウスと島東部

志摩 的矢湾の夜明け

さまざまな形の島や半島が複雑な海岸線をつくるリアス海岸の地形が美しい志摩半島。その東側に、細長く入り組んだ的矢(まとや)湾がある。カキの養殖でよく知られており、湾に面して志摩スペイン村がある。

そんな的矢湾沿いの宿に泊まった時のこと。
ちょうど夜が明ける頃に目が覚めた。宿の窓から的矢湾を眺めると、瑠璃色の空に水平線沿いが暁色になり始めていた。ほんのわずかな間に、東雲色から曙色へとグラデーションに移り変わっていく。まだ少し眠かったけれど、もう目が離せない。
わずかな間に、一瞬だけ見せては変わっていくさまざまな色。
明るさが増してくると、波のおだやかな湾の水面も空の色を対称に映して色を変えていく。

そうしてすっかり明けきった空は、真っ青な夏空になっていた。

西国三十三所結願の地 谷汲山華厳寺の紅葉

観音菩薩が衆生を救う時に33の姿に変化することに由来するという西国三十三所。三十三か所を巡拝することで現世で犯したあらゆる罪業が消滅し、極楽往生できるとされるとされている。番外札所も含めほとんどすべてが近畿2府4県に点在するが、「谷汲さん」で親しまれる第三十三番札所の谷汲山・華厳寺だけは岐阜県にある。
西国三十三所巡礼は札所番号に関係なく巡っても大丈夫ではあるが、この最東端の華厳寺、満願を報告する「満願堂」、御朱印を押した笈摺などを奉納する「笈摺堂」、そして巡礼の締めくくりとされる「精進落としの鯉」があり、満願・結願(けちがん)の地として最後に訪れる人が多いようだ。
そんな重要な巡礼の地である華厳寺、飛騨・美濃紅葉33選にも選ばれており、11月中旬から12月初旬にかけてはとても紅葉が美しい。西国三十三所巡礼者ならずとも、この目を奪われるほどの紅葉は一見の価値がある。境内のみならず、駐車場から寺に至るまでの参道の紅葉もとても見事だ。

>> 谷汲山華厳寺

関連 西国三十三所・圧巻のダルマ風景 勝尾寺

伊勢志摩・千鳥ヶ浜から見る富士山

水平線の向こうにぼんやり浮かぶ山影、じつはこれ、三重県・伊勢志摩から眺めた富士山。

鳥羽市相差(おうさつ)・千鳥ヶ浜から見える富士山、距離にして200km以上・・・。
夏には海水浴客でとてもにぎわう千鳥ヶ浜だけど、冬の空気が澄んだ早朝にはこんな風景に出会えることがある。早朝といっても、冬至が過ぎてすぐくらいの季節なので、そんなに早起きして見たわけでもなく、7時台。水平線から昇っている朝陽まで見られる。
冬にこのあたりを訪れたなら、ほんのちょっとだけ早起きして、水平線のほうを眺めてみることをお勧めしたい。一見の価値ありの風景だ。

雨晴海岸の絶景 女岩と雪の立山連峰

開業間もない北陸新幹線に乗って旅に出よう。
そう思い立ち、選んだ目的地は能登半島・雨晴海岸

ずっとずっと、一度訪れたいと思っていた。立山連峰が雪景色の季節に、そして晴れている日に。北陸新幹線の開業が、その念願を叶えるきっかけになった。

義経岩のあたりから、海越しに眺める女岩と雪の立山連峰。ここは絶景中の絶景。
日本海側のこと、まだまだぐずつく可能性も高い3月の終わりに、奇跡のように、雲一つない青空が迎えてくれた。

サムネイルだと途中から同じような写真ばかり並んでいるように見えるけれど、これは鳥があらわれて、その姿を追ったから。拡大すると写っている。雪の立山連峰を背景に佇む鳥の姿は、とても優雅だ。

そして、これらの写真を撮った場所は義経岩付近。
義経岩は源義経が奥州へ落ち延びる途中、にわか雨が晴れるのを待ったと言われている岩で、それがこの雨晴(あまはらし)という地名の由来にもなっている。

この海岸のすぐ横は氷見線が通っているのだが、雪山を背景に列車がここを通過する瞬間もまた絶景。氷見線の終点・富山県氷見市は藤子不二雄A先生のふるさと。時には忍者ハットリくんのラッピング列車が来ることもある。